傘の花が咲く

私の勤める小さな会社は、6階にある。エレベーターを出て右側へ、窓の所まで歩いてドアを開けると、いつもの顔がコンピュータの前に並んでいる。暖かくもなく、冷たくもない雰囲気だ。私のデスクトップの壁紙に使っているハワイのビーチのようだ。

 

私は、人間関係も仕事もそこそこうまくいっていると思うのであるが、なぜか窓際に席はある。窓際、クールビズでは対応できない暑すぎる夏、一番忙しいときにほどよくポカポカで眠くなる冬。

 

私はこの場所を気に入っている。部長の顔が見えないのもいい。それになんと言っても道路を挟んで向かい側に小学校の校門があるからだ。

 

部長に注意されないように黙って少し窓を開けておくと、子供たちがはしゃいでいる声が聞こえてくる。部長が好きな癒しの曲が入ったCDではない。生の生きた声だ。ライブ放送である。毎朝、低学年の子供は、父親や母親に連れられて校門で別れて友達と出会う。夕方は、おばあちゃんやおじいさんの出迎えの顔を見て友達と別れる。


地上からの距離にビルの6階は実にいい。蚊がなぜだか上ってこない。子供たちのソプラノの高い声もうるさくは感じない。低音のバスや大型のダンプの音だって心地よく聞こえる。小学校の校庭にある大きな桜の木々、色々な積荷を載せたトラックの荷台、残業している時に見つける、いつもの会社近くにあるバーの看板の明かり、色々なものが程よい大きさに見える。

 

今日は、下校時間に細い春の雨が降り出した。雨は少し冷たいが濡れても歩けるぐらいだった。しかし急に雨脚が速くなり、出迎えのおばあちゃんやおじいさんが傘を子供に渡すと、小さい傘が、校門から次々に開いていく。まるで春の花が咲いていくように黄色や赤色の小さな花びらが広がっていく。

 

もしかすると、雲の上に住んでいる住人はこれが見たくて春の細い雨をにわか雨にしたのかも、と、思って、黒く低い雲を見上げた。

 

私と同じ窓際の人だろうか・・・

 

 

 

 

 

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