レモンパスタ

レモンとパスタ
レモンとパスタ

一人暮らしは、寒い冬に自分の膝を抱いて寝る以外は気楽なものだ。

気兼ねなく部屋を散らかしながら山道具の手入れができる。

 

手入れをしているのか、片付けているのか分からないが、そのまま置

いていても誰も文句は言わない。あるとすれば、時々泊まりに来る部

屋のカギを渡している弟が残す留守番電話の苦情ぐらいだ。


「あー俺、と言っても、オレ、オレ詐欺じゃない。山狂いの兄貴の弟

でーす。えーと、出張の間、2日ほど泊めてもらいましたが、山の革

靴が部屋に転がっていたので、磨いて玄関においておきました。駄賃

にマッカランとポルトガルかスペインのポートワイン、T男と空けまし

たので、一応報告しておきます。泥棒がはいったのじゃないよ。では、

では・・・」


「えー、言い忘れましたが、部屋は綺麗にしとけと親父が言っていまし

た。なんで親父わかるのだろうね・・・やっぱ血統かな」


弟のY郎には、いつも美味い酒から空けられている。しかし奴はワインを

飲まないので、最悪でもワインだけは部屋に残っている。せっかくの週末

も長雨でどこの山にも行けない。洗濯も気が滅入る。

 

雨の音で起きた朝、昨夜から冷やした白ワインを冷蔵庫から出し、テーブ

ルに置く。ボーと窓の外の時より降るスコールのような大粒の雨を眺めな

がら、このまま飲むか、飯でも作るか、と考える。

 

とりあえず、テレビのスイッチを入れるが、先週も今週も変わらないよう

な番組をやっているので、消す。ラジオを入れる。チャンネルを合わせて

いるとNHKのイタリア語講座が聞こえてきた。チャンネルをそのままにして、

「やっぱ。イタリアンかな」


「梅雨に合う。レモン味のパスタでも作るか・・・」
 独り言を言いながら、冷蔵庫をあさる。


「バター、玉ねぎ、レモン、ベランダのパセリ、あとは、冷凍庫の海老を5,

6本だな」


ラップをとると焼酎で洗っておいた海老はすぐにバラバラになった。水にさら

している間に小さい玉ねぎは皮をむき、みじん切りにして皿に置く。レモンは

白い部分が残らないように皮を縦に剥いて、3枚ほど重ねて、細く千切りにす

る。

 

雨に濡れているベランダにおいてあるバーブ鉢の中からパセリをちぎり、みじ

ん切りにして小さい皿に置く。解凍した海老の皮をとり、一口大に切る。


沸かしていたパスタ用の鍋に塩を少々入れて、スパゲティー二を一握り放り込む。

ガスは中火にしてフライパンの大目のバターを溶かして、みじん切りの玉ねぎを

透明になるまで炒め、海老と千切りのレモンの皮を半分入れて炒める。海老に火が

通ったら、少な目の塩とコショウ粒をゴリゴリしてフライパンにかける。

 

茹であがったスパゲティー二と茹で汁を少し入れて味をなじませる。大き目の白い

皿にスパゲティー二を盛り付けて、残っている千切りのレモンの皮とフレッシュパ

セリをパラパラと散らしてかける。完成だ。


冷蔵庫の白ワインを細いグラスに入れて、白い皿の横にフォークと一緒に並べる。レ

モンの香りが、蒸し暑さを飛ばしてくれるし、白ワインの酸味が心地よい。


残念ながら、NHKの放送は邦楽に特集になったが、それも雨の音には似合うかもしれない。
レモン味の梅雨。悪くない。

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